東京高等裁判所 昭和34年(く)1号 決定
少年 N(不明)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由の要旨は、本件審判をするに当り、保護者である自分に何等呼出もなく、従つて審判廷に出席することができず、保護者として意見を述べることができなかつた。保護者の意見をきかずにした原決定は違法であるから抗告に及んだ、というのである。
ところで、少年に対する保護事件記録を調べてみると、原審は少年の父Oに対し、昭和三三年一二月一五日の審判期日呼出状を同月一二日に発送したが、該呼出状は宛先住所に尋ね当らないという理由で不送達に終つた。原審としては審判につき保護者を呼び出す必要があると認めて、その措置に出でたのであるが、その実を挙げることができなかつたわけである。そこで、右審判期日に右保護者の不出頭のまま審判を行ない、その結果、原決定を言渡したのであつた。家庭裁判所が送致決定をするについて必ず保護者の意見をきかなければならないものではないのであつて、記録を調べてみても、その他にも原決定をもつて違法とする跡の見るべきものはないのであるから、本件抗告は理由ないものとして排斥するの外はない。それで、少年法第三三条第一項に則つて、これを棄却することとし、主文のごとく決定する。
(裁判長判事 中野保雄 判事 尾後貫荘太郎 判事 堀真道)